やっぱ、人 It's people after all.

ステートメント

生成AIが、文章を書き、絵を描き、調べものや事務までこなす時代になりました。では、人にしかできない仕事とは何でしょうか?「やっぱ、人」は、その問いから生まれた動画シリーズです。

第一弾は「歩行訓練士」。

目の見えない人や見えにくい人が、白杖(はくじょう)を使って安全に歩けるように指導・支援する専門職です。移動だけでなく、点字やパソコンの操作、調理や掃除といった日常生活全般の訓練も行います。

誰かの世界をひらいていく、すごい仕事。
やっぱ、人なんです。

EPISODE 01

歩行訓練士

制作メンバー
ディレクター+編集+制作
塩谷実来(AOI Pro.)
プロデューサー
髙橋伸也(AOI Pro.)
カメラマン
𦚰山響(AOI Pro.)/ 樋口大輔
制作応援
生駒颯太(AOI Pro.)
音楽プロデューサー
工藤涼
作詞+作曲+歌唱
SIN-TARO
作曲+編曲
junchai
ミキサー
髙橋勇人(TREE Digital Studio) / 松本明日菜(TREE Digital Studio)
タイトルデザイン
柏子見絵麻(AOI Pro.)
撮影+ポストプロダクション協力
TREE Digital Studio

現状

視覚障害のある人は、全国に約31万人。一方、白杖を使った歩き方などを教える専門職「歩行訓練士」は、全国にわずか314人です。安全に、自分らしく歩くために、なくてはならない存在。一方でその認知は低く、仕事としての魅力ややりがいは、あまり伝わっていません。だから第一弾の主役は、歩行訓練士に決めました。

視覚障害のある人

視覚障害のある人 約310,000人

歩行訓練士

歩行訓練士 314人

視覚障害者およそ1,000人に対して、歩行訓練士ひとり。

出典:2026年度・日本歩行訓練士会調査/314人は盲学校を含む機関に在籍する歩行訓練士の人数です

THE WORK

歩行訓練士の仕事。

「歩行訓練士」という名前から、白杖の使い方を教える人だと思われがちです。でも実際の仕事は、その人の暮らし全体に関わります。歩くこと、暮らすこと、つながること、と大きくは3つあります。

01

歩行訓練

歩く

点字ブロックのある歩道を並んで歩く、鈴木さんと歩行訓練士の髙田さん
歩行訓練のようす

歩行訓練士が指導するのは、白杖を使って外を歩く方法が中心です。ほかにも、人と歩く方法(手引き誘導)、屋内をひとりで歩く方法、ロービジョン(弱視)の方が保有視覚を活用して歩く方法、夜間に歩く方法なども指導します。聴覚、触覚、嗅覚といった視覚以外の感覚も活用することで、より安全で確実な移動ができるよう訓練を行います。

なお、盲導犬と一緒に歩くときの訓練は、盲導犬訓練士という別の専門職が行います。

02

日常生活訓練

暮らす

まな板の上の大根に包丁を当てる利用者の手元
生活訓練の調理指導

見えにくさが生じると、朝起きてから夜寝るまでの生活動作で、それまで何気なく行っていたことができなくなってしまうことが多くあります。時間の確認、食事の準備、お金や衣服の管理、掃除や洗濯、身だしなみの確認など、困りごとはさまざまです。映像のなかで包丁を持っているのは、この訓練です。

歩行訓練士は、これまで培われた経験や生活技能を活かしながら、便利な用具や効果的なやり方を紹介し、訓練を行うことで、QOL(生活の質)の向上へとつなげます。

03

コミュニケーション訓練

つながる

点字やパソコンに加えて、最近ではスマートフォンやタブレットの訓練を希望する方が多くなっています。こうした機器の訓練を総称して、ICT(情報通信技術)訓練と呼びます。

音声読み上げ機能や画面設定(見やすい画面の色や文字の大きさへの変更)、便利なソフトやアプリを活用できるよう訓練を行います。ICT機器は、視覚障害のある人にとって欠かせない日常生活のツールです。

このほかに、本人やご家族が困っていることの相談を受けたり、ロービジョン機器(拡大読書器や拡大鏡など)の使い方の訓練も行います。また、地域の施設・団体の紹介、福祉制度や福祉サービスの情報提供も行っています。歩行訓練士の仕事内容は、所属先によって異なる場合があります。

出典:日本歩行訓練士会「歩行訓練士とは」(外部サイトが開きます)

VOICES

歩行訓練士と、当事者。
それぞれの言葉。

必ず、成功で終わらせる。

「失敗しちゃったね、次はこれを頑張ろう」という叱咤激励もあると思うんです。でも歩行指導でそれをやってしまうと、外に出るのがこわくなってしまうこともある。だから必ず授業の最後にはできることをやって、成功で終わらせるようにしていました。鈴木さんが1人で色々な人に声をかけて、外に出られるようになったのは、すごく嬉しいですね。

歩行訓練士・髙田拓輝さん

髙田拓輝さん/歩行訓練士

できないと思っていたことを、できるに変えてくれた存在。

もう私は1人で外を歩けないんだって思っていました。だから毎回の歩行実習で「今のところ良かったよ」「勘がいいね」と言ってもらえたのが、すごく嬉しかったです。

笑顔でインタビューに答える鈴木さん

鈴木さん

視力が落ちた時に盲学校の体験で髙田先生と出会う。フロアバレーボール部キャプテン。

横断歩道を渡る訓練。少し離れた場所から歩行訓練士が見守る
歩行訓練のようす

「オッケー 素晴らしい」「グッドです」── 訓練中の髙田さんの声かけ

選択肢を渡して、一緒にやってみる。

見えにくくなっていく段階で「どうしたらいいだろう」という時に、選べる選択肢を渡して、一緒にそれをやってみる。私自身も寄り添いながら、教えられることがいっぱいあります。

歩行訓練士・清野華子さん

清野華子さん/歩行訓練士

どんどん、あたらしい世界が広がっていく感じ。

千切りキャベツを切るのが大好きだったのに、できなくなったからと簡単に諦めようとしていたんです。でも清野さんに色々と教えていただいて、「こんな道具があるんだ」「こんなやり方があるんだ」と嬉しくなりました。本当にね、私が落ち込んだり、もうどうしようって思う時に、なんか連絡がくるんですよ。

大野さん

大野さん

ガスの火が見えなくなり、料理を諦めかけていた。清野さんの生活訓練で、ふたたび台所に立つ。

台所で、歩行訓練士が利用者の手を取り包丁の持ち方を伝える

「チリチリ音がしてくると思うので」「音がした」── 音を頼りに、火加減を伝える

向き合うのではなく、同じ方向を向く。

自分たちが関わり、お手伝いをすることで、「できることが増えた」「行けるところが増えた」という場面を、一番そばで見られる。本当に、この仕事をやっていてよかったなと感じるところですね。

歩行訓練士・島田延明さん

島田延明さん/歩行訓練士

外に出るのが、楽しくなってきましたよ。

白杖を持つこと自体、最初は嫌でした。抵抗がね。1人で外に出るなんてこと、ほとんどなかったんです。それが今は、外に出るのが楽しくなってきた。そういう生き方を作ってくれているのが、歩行訓練士の方だなと感じます。

笑顔の飯島さん

飯島さん

白杖を持つこと自体に抵抗があった。島田さんとの歩行訓練を経て、ひとりで外に出るように。

並んで歩きながら会話する飯島さんと歩行訓練士・島田延明さん

同じ方向を向いて歩く ── 島田さんの言葉のとおりに

JOIN

歩行訓練士のなり方

2年間の準備期間が、「私の成長」に大きくつながる。

「歩行訓練士」は通称で、国家資格ではありません。正式な呼び名は「視覚障害生活訓練等指導者」。歩行訓練をはじめとする視覚障害リハビリテーションに携わるには、養成機関でカリキュラムを履修することが望ましいとされています。

養成機関は、大阪市の社会福祉法人日本ライトハウス養成部と、埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科。全国に、2つだけです。いずれも主に大卒者を対象に、2年間かけて学びます。

学ぶのは、福祉・心理・教育・医学といった基礎から、ロービジョンや重複障害についての専門的な内容、そして実技や演習で身につける技術と指導法まで。臨床実習も、卒業研究もあります。

実技では、受講生自身がアイマスクやシミュレーションゴーグルを着けます。見えないとは、どういうことなのか。その不安も、心細さも、自分の身体で通ってから、教える側にまわります。

こういう方におすすめです。

  • 人が好き、人と関わるのが好き
  • 誰かの役に立つのが好き
  • コツコツずっと何かを続けるのが好き
  • 前に立つより、となりに並ぶのが好き
  • できるやり方を、一緒に探すのが好き

受講にあたっては基礎学力や指導者としての資質を確認する審査があり、受講期間中は日々様々な課題と自習に取り組みます。

正式名称
視覚障害生活訓練等指導者
従事の要件
養成機関で指導者養成のカリキュラムを履修することが望ましいとされる
養成機関
社会福祉法人日本ライトハウス 養成部(大阪市)
国立障害者リハビリテーションセンター学院 視覚障害学科(埼玉県所沢市)
履修期間
2年間(主に大卒者対象)
履修時間
総計3,000時間
位置づけ
国家資格ではない(通称が「歩行訓練士」)

日本ライトハウス養成部では、視覚障害リハビリテーション関連施設の職員を対象に、分割履修などの特別措置も設けられています。

どんなに生成AIが進化しても、いや進化するほどに必要になる仕事が「歩行訓練士」です。